第91回 米アカデミー賞作品賞受賞「グリーンブック」

今年度、第91回 米アカデミー賞の作品賞を受賞した「グリーンブック」。監督・製作・脚本(共同脚本)は、ピーター・ファレリー。古くは、キャメロン・ディアス主演「メリーに首ったけ」、ジム・キャリー「Mr.ダマー」「ふたりの男とひとりの女」などを撮った監督である。

グリーンブックの見どころは?

 1960年代でもなお激しい黒人差別の社会だったアメリカで、黒人の天才ピアニストとして活躍していたドン・シャリーが米南部に演奏ツアーに行く。その運転手に、そもそも黒人への偏見が激しい、いわば典型的なアメリカ人であるトニーが務めることになる。トニーはナイトクラブの経営が傾き、金が底をつきた状態だった。2人の息子と妻を養うため、お金のために黒人音楽家の運転手・用心棒を引き受けたのだ。

 観客の視点は、偏見がある主人公トニーとともに黒人が差別される内側に入り込み、立場の逆転、視点と価値観の見事な転倒を体験させられることとなる。それがピーター・ファレリー監督のこれまでコメディ演出で培ってきた鉄壁の映画手腕であり、感動を呼ぶ最大の要因ともなっている。

 60年代の南部の黒人へ扱いは本当にひどい。食事する場所や泊まる場所にも黒人に対して異常なまでに境界線を引く社会。その不条理なまでの差別にいらだった運転手トニーはやがて、黒人たちをのら犬扱いする白人に抵抗し、殴りかかろうとする。観客の感情も「トニーよ、白人たちをぶっとばしてしまえ」という気持ちになる。

 アメリカ北部の白人社会では人気の高かった黒人音楽家シャリーは、なぜ黒人差別・偏見の強烈にはびこるアメリカ南部へのツアーを強行したのか。
 それはお金や名声・慈善事業のためではない。そこがこの映画の大事な鍵となる。

 人には各々その運命に生まれてきたことに、極めて重大な意味があり、この世界で成し遂げるべき使命がある。人は才能や能力だけで生きていくことが絶対の正解ではない。運命や状況に翻弄され、人はそのメッセージ・自分の使命に気づく。大事なのはそのやるべきことに挑む、踏み出す勇気なのだ。
 


「グリーンブック」 TOHOシネマズ日比谷ほか、大ヒット公開中!

 監督:ピーター・ファレリー 出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ

 配給:ギャガ 提供:ギャガ、カルチュア・パブリッシャーズ